糖尿病治療薬解説 糖尿病

糖尿病薬の種類一覧【立ち位置を理解する】

更新日:

※2021/4/4内容改訂

経口血糖降下薬は7種類もありますが,それぞれの立ち位置は頭の中でまとまっていますか?

実際に使い分けられていますか?

私は糖尿病専門医ではないですが,心血管疾患の管理のため,糖尿病の加療経験は少なくありません.

むしろ,非専門にではないからこそ,"非専門医でも理解できて実用性のある知識"の形でお伝えできます.

今回は,全7種類の糖尿病の立ち位置を,インスリン抵抗性や腎機能の視点から解説します.

ガイドラインを読むだけではわからない,糖尿病薬のイメージを身に着けることができるので,ぜひ読んでみてください.

糖尿病薬の種類一覧【立ち位置を理解する】


現行の経口血糖降下薬は,スルホニル尿素薬(SU薬)ビグアナイドDPP4阻害薬αグルコシダーゼ阻害薬グリニド(速効型インスリン分泌促進薬)チアゾリジンSGLT2阻害薬,の7種類が存在します.

それぞれの特徴を説明していってもいいのですが,使い分ける際に大事なことは,糖尿病薬全体で見た時の,各薬剤の立ち位置です.
 
 

ガイドラインで示されている各薬剤の立ち位置

糖尿病薬 ガイドライン
ガイドラインなどでよく見かけるこの図は,各薬剤の特徴と,それぞれの立ち位置を示してくれています.

しかし,少しイメージがわきづらいと思うので,これに臨床的な実用性を持たせていきます.
 
 

インスリン抵抗性と空腹時高血糖・食後高血糖を意識した立ち位置

ガイドラインの図のように,ただ情報を並べられただけでは,臨床でアウトプットしやすい知識になりませんよね.

ここからは,各薬剤の立ち位置をもっとわかりやすく考えていきましょう.

 

2つの指標で経口糖尿病薬の立ち位置を区切る

多きな声では言えないですし,専門医の方にみられたら怒られますが...

実際の現場では,全症例でインスリン分泌能やインスリン抵抗性を調べることはないですよね?

そこで,インスリン抵抗性の指標として,よく使われるのが"肥満か否か"です.

さらに,"食後高血糖か,空腹時高血糖か"という指標を追加して,経口糖尿病薬の立ち位置を視覚化したのが,以下の図です.

糖降下薬の立ち位置 改 ぷーオリジナル
定量評価に基づく図ではないので,あくまで立ち位置を印象づけるだけのものですが,印象づけが重要です.

  • 食後高血糖か,空腹時高血糖か
  • 肥満か,やせか

この2種類の指標を,薬剤選択の目安にするといいです.
 

実際の薬剤選択に立ち位置図を生かす

「よーし,この患者さんは空腹時も高血糖でやせ型だから,立ち位置図から見ると...まずはSU薬だ!!」

とは残念ながらなりません
 
 
そもそも糖尿尿治療薬には,エビデンスや安全性の観点から推奨度の高い3大巨頭があります.

それが

ビグアナイドDPP4阻害薬SGLT2阻害薬

であり,たいていの場合,第1選択薬はこの3剤の中から選ばれます
≫糖尿病治療の第1選択薬の選び方の解説はこちらの記事.
 

つまり,

経口血糖降下薬の立ち位置をふんわり理解するためにも,この立ち位置図は有用ですが,

実用的にこの立ち位置図が最も活躍するのは,(第1選択薬がいくつかに絞られているため)併用薬の選択時です.
 

例外として,食後高血糖のみの場合,立ち位置図からわかるように,αGI,グリニドなどが第1選択の候補に挙がってきます.
≫食後高血糖改善薬の比較解説はこちらの記事.
 
 

➀単剤でコントロールがついていない血糖値は,空腹時なのか(=血糖全体が高い),食後なのか(=血糖変動が大きい)
肥満かやせか

という流れで,立ち位置図を見ながら選択します.

 

腎機能からみた立ち位置

例えば,
先ほど言及した第1選択薬候補の3大巨頭,ビグアナイドDPP4阻害薬SGLT2阻害薬ですが,
極端な例でいうと,GFR<10の症例においては,まず使用する経口血糖降下薬としてはDPP4阻害薬1択です.
 
悩んだすえに選んだ薬剤が,腎機能によって禁忌になると,労力が水の泡です.
 
それほど,腎機能は薬剤を選ぶ際の大きな要になります.
 
ということで,具体的な薬剤を吟味する前に,まずは,腎機能で篩(ふるい)にかけましょう
 

腎機能障害と糖尿病薬の禁忌

腎機能低下 血糖降下薬 糖尿病薬
SU:スルホニル尿素薬
BG:ビグアナイド薬
αGI:αグルコシダーゼ阻害薬
TZD:チアゾリジン薬
DPP4I:DPP4阻害薬
SGLT2I:SGLT2阻害薬
GLP1A:GLP1アナログ

統一されたGFRのcut off値がないこともあります
(ガイドラインや文献によってマチマチ)

上の表は,CKD診療ガイドライン添付文書を主に参考に作成しました.

特に重要なのは,ビグアナイドの扱いです.

ビグアナイドは推奨度の高い薬ですが,腎機能の制限がやや強いので注意が必要です.

重要なのは禁忌

ビグアナイド>SU薬>チアゾリジン,グリニド,GLP1アナログ の順で気をつける

 

立ち位置から薬剤を選択していく手順

糖尿病治療薬の立ち位置について,解説してきました.

以上の内容を踏まえて,具体的な薬剤選択の手順をまとめると,以下のようになります.

➀腎機能で篩(ふるい)にかける

腎機能低下 血糖降下薬 糖尿病薬
禁忌薬剤は,バッサリと選択肢から外します.

➁1剤目の薬剤を選ぶ

i) 食後高血糖のみ

αGI,もしくはグリニドを選択しても良い.

ii) それ以外

ビグアナイドDPP4阻害薬SGLT2阻害薬の3大巨頭から選ぶ.
≫糖尿病治療の第1選択薬の選び方の解説はこちらの記事.

➂単剤でコントロールがつかない時,追加する併用薬を選ぶ

➀単剤でコントロールがついていない血糖値は,空腹時なのか(=血糖全体が高い),食後なのか(=血糖変動が大きい)
肥満かやせか

糖降下薬の立ち位置 改 ぷーオリジナル

おまけ:個々の薬剤の特徴【与えられたカードの俯瞰】

今回は,糖尿病薬の立ち位置を,インスリン抵抗性/分泌低下空腹時高血糖/食後高血糖腎機能の視点で,それぞれ解説しました.

このようなマクロの視点に加え,各薬剤には得手不得手があります.

それぞれの糖尿病薬の特徴も,ザックリと理解しておきましょう.

ビグアナイド薬 長所 短所
DPP4阻害薬 長所 短所
SGLT2阻害薬 長所 短所
SU薬 長所 短所
グリニド 長所 短所
チアゾリジン薬 長所 短所
GLP1アナログ 長所 短所

≫DPP4阻害薬の特徴をまとめた記事はこちら.
≫SGLT2阻害薬の特徴をまとめた記事はこちら.

 
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