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【エビデンスと安全性】糖尿病薬の使い分け【本当の第一選択薬】

更新日:

※2020/6/20内容改訂

本邦の成人のおよそ10人に1人が糖尿病になる時代です.

臨床の場で糖尿病患者を診ない医療者人生はありえないでしょう.

一方で,糖尿病薬は種類が非常に多いですが,明確な使い分けの基準もあやふやなまま,なんとなく薬剤選択をしていませんか?

私は糖尿病専門医ではないですが,心血管疾患の管理上,糖尿病加療の経験は少なくありません.

そんな私が,本邦で推奨度や使用頻度の高い,ビグアナイド,DPP4阻害薬,そして最近注目のSGLT2阻害薬をピックアップし,それらの特徴を,エビデンスや安全性の観点から解説しています.

ご自身の糖尿病治療に根拠と自信を持ちたい人は是非読んでみてください.

エビデンスからの道しるべ


何はともあれ,まずはガイドラインを確認しましょう.

血糖降下薬のガイドラインにおける推奨

米国糖尿病学会ガイドライン2019より ぷーオリジナル

ビグアナイドは,SU薬とともに古参の糖尿病薬であり,血糖降下作用と独立したイベント抑制効果を報告されて以来,推奨度の最も高い薬剤となっています.
実際,米国の糖尿病治療ガイドラインのいずれを見ても“まずは生活習慣改善とメトホルミン”というように一途な推奨をしています.

Drぷー
「え?いきなりメトホルミン?」
「腎機能とかは無視?」
と,一瞬思います.

もちろん,実際は腎機能も考慮しますが,表記のされ方からは,“メトホルミンがいい薬なんだぞ”という気概を感じますよね.

血糖降下薬のエビデンス

メトホルミン以外の糖尿病薬で,全死亡の有意な抑制作用が認められた薬剤は,エンパグリフロジン(SGLT2阻害薬)[EMPA-REG OUTCOME試験]のみです.

他剤は,血糖やHbA1cを代用end pointとした試験の結果で承認されています.

このため,糖尿病治療薬の第1選択は今でもメトホルミンであり,妥当な第2選択薬は曖昧です.

日本人における研究でも,各種糖尿病治療薬の心血管イベント抑制作用をみた結果,ビグアナイド薬のみが有意に40%イベント発症を抑制しています.
日本で多用されているDPP4阻害薬の心血管イベント抑制作用がSU薬と変わらない程度であることが同研究で示されています.
(Reduced vascular events in type 2 diabetes by biguanide relative to sulfonylurea: study in a Japanese Hospital Database. BMC Endocr Disord. 2015 Sep 17;15:49.)

日本のガイドラインの不思議

なぜ,ここまで明確なエビデンスの差があるのに,実臨床での第一選択薬に差があるのか.

実は,日本糖尿病学会が作成しているガイドラインでは,第一選択薬は(メトホルミンと)明示されていないんです.

Drぷー
これがなぜなのかはわかりません.

ここからは,本邦のガイドラインの推奨が濁されていることと関連していそうな,ビグアナイド薬が抱える負のレッテルと,本邦独特の風潮であるDPP4阻害薬の頻用などについて解説していきます.


 
 

乳酸アシドーシスのレッテル:ビグアナイド

上述したエビデンス面での優位性の他,体重増加作用がなく,単剤での低血糖も少なく,薬価も安価,という良いこと尽くしのビグアナイド

それでも臨床家がビグアナイド以外の薬剤を選択することがあるのは,乳酸アシドーシスなどを懸念した禁忌症例のバリエーションの多さによるところでしょう.

ビグアナイドの禁忌


重度の腎機能性障害(eGFR<30)/透析患者
・重度の肝機能障害
・心不全や呼吸不全で低酸素血症を起こしやすい状態
脱水,もしくは脱水となりやすい状態(下痢・嘔吐,高齢者など)
・過度のアルコール摂取
・重症ケトーシス/飢餓状態
重症感染症,手術前後
・妊娠


Drぷー
多いですよね...

臨床で手を出しづらくなるのもわかります.

特に,腎不全脱水は,高齢化社会では無症候性に容易に潜んでいるリスクなので,不安になります.

個人的には,75歳以上の高齢者への使用は,かなり慎重にすべきかと思います.

これらの禁忌はほとんどが乳酸アシドーシスのリスクを懸念して定められたものです.

その乳酸アシドーシスの発生率は,10万人当たり年間3人程度と非常に稀です.

同じく古参のSU薬にみられる遷延性の低血糖,ないしそれによる死亡例の方がよっぽど高頻度なので,上述の禁忌だけ頭に入れれば,ビグアナイドは基本的に安全に使用できるものと理解してください.

禁忌をしっかり把握して,ビビらず使おうビグアナイド

 

日本の実臨床の特徴:DPP4阻害薬の安全性

日本ではDPP4阻害薬が多く使われています.
「肥満症例で効きにくい」という報告があり,欧米での推奨度は高くありません
「日本人に良く効く」という認識の方もいらっしゃるかもしれませんが,そのようなデータはありません.
また,通常治療にDPP4阻害薬を加えても,心血管outcomeの改善効果はないことも報告されています.

では,なぜここまでDPP4阻害薬は,好まれて使用されるのでしょうか.
それは安全でお手軽だからです.
・SU薬やビグアナイド薬のほど,腎機能の縛りが少なく,低血糖リスクが低い
・αGIやグリニドのような服薬アドヒアランスの弊害もない
非専門医が“まず使ってみよう”と思える薬剤となります.
逆に,専門家であれば,第1選択でDPP4阻害薬を選択する機会は少なくなるかもしれません.

糖尿病治療の流れ

本邦の診療マニュアルでは,
“ビグアナイド第一”の精神は保ちつつも
併用薬の1st choiceにDPP4阻害薬が上がります.

繰り返しますが,欧米では併用薬のコンセンサスは得られておらず
これは日本(ないしアジア)独自の傾向です.

Drぷー
ビグアナイドとまるで逆ですね.

腎機能も造影剤の使用も気にしなくていいので,循環器内科医としてはついつい手を出してしまいます.

しかし,肝心の心血管イベントを防ぐ効果が証明されていない,というやや本末転倒な薬剤なんですよね...

使うなとは言わん.
しかし,功罪を知ったうえで使おうDPP4阻害薬

≫DPP4阻害薬についてまとめた記事はこちら.
 
 

近年の流れ:SGLT2阻害薬

メトホルミン以降,初めて全死亡を有意に抑制した試験EMPA-REG OUTCOME.
その結果を受けて,SGLT2阻害薬が注目されました.
特に抑制されるイベントは心不全であり,心不全症例では一考の価値があります.
実際,2019年の米国糖尿病学会ガイドラインではSGLT2阻害薬とGLP1アナログの推奨度が高められています.
非常に魅力的な薬剤に思えますが,EMPA-REG OUTCOMEには注意すべきlimitationが2つあります.

まず1つが,“重症例の二次予防”が対象であったこと.
心血管リスクが低い症例では,同様の有効性があるかは不明です.

また,もう1つのlimitationは,“7割程度が通常療法(メトホルミン)をベースに治療されている”ということです.
エンパグリフロジン単剤の効果ではない可能性があります.

Drぷー
まだまだエビデンスの蓄積が望まれる段階ですが,循環器内科医としてはこれからに期待がかかる薬剤ですね.

※米食品医薬品局(FDA)が2020年5月5日に,ダパグリフロジンについて「成人の左室駆出力が低下した心不全(HFrEF)に対する、心血管死亡または心不全入院の予防」という適応を追加する,と発表しました.

≫SGLT2阻害薬についてまとめた記事はこちら.
 
 

まとめ

あくまでも,欧米のガイドライン上の第一選択はビグアナイド,と強調したうえでまとめます.

ココがポイント

エビデンスのビグアナイド薬
安全性のDPP4阻害薬
心不全症例にSGLT2阻害薬

Drぷー
腎機能などの不安がなければ可能な限りビグアナイド薬から開始するのが定石.
しかし,高齢化社会であることを加味すると,DPP4阻害薬も魅力的です.
心不全症例では,SGLT2阻害薬から治療を始めてみるのもいいかもしれません.

この記事を読んだ後に,ガイドラインや文献で知識を拡充する方がもちろんbetterですが,糖尿病治療の入門として,今回の記事が,皆さんの“明日からの医療”の足しに少しでもなれば幸いです.

 

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